特定秘密保護法の廃止を求める声明



 2013年12月6日、特定秘密保護法が参議院本会議で強行採決され、成立しました。しかし、不十分きわまる国会審議やアリバイ作りのための地方公聴会の開催に見られたように、与党の拙速かつ強引な議会運営は各方面から強い批判を浴びました。その後、特定秘密保護法に反対する動きは、各地で大きく広がりつつあります。にもかかわらず、安倍内閣はそうした国民の声にいっさい耳を傾けることなく、2014年10月14日、運用基準と法施行日を12月10日とする政令を閣議決定しました。

 特定秘密保護法は、国民の知る権利を奪い、民主主義社会に不可欠な情報を国民から隠すことを意図しています。それは世界の潮流である情報公開の流れに逆行し、学問の自由な発展を妨げるものに他なりません。また、同法が集団的自衛権の行使容認と相まって、戦争を準備し軍事国家に道を開くものであることは明らかです。

 私たちは、基本的人権、国民主権、平和主義に示される現行憲法の基本原則を踏みにじる特定秘密保護法に反対し、その廃止を求めます。理由は以下の通りです。


⒈特定秘密保護法は、政府および行政機関が秘密情報を指定し管理することによって、国民の知る権利を侵害し、国民の民主主義的な権利を抑圧して、国民を政治社会から排除しようとするものです。特定秘密とされるものの範囲は、運用基準によっても無限定的で、秘密指定期間もあいまいであり、チェック体制はきわめて不十分です。しかも、これらの秘密は、住民の生活と生命に直接責任を負っている地方自治体の長には提供されません。

⒉特定秘密保護法は、政府の情報への自由なアクセスおよび内部告発者の保護を明示している国際的に承認されたツワネ原則と相容れません。学問の自由な発展と文化活動の前進にとって、情報、公文書や各種文献の公開・保存・自由な流通は決定的に重要です。特定秘密保護法は、学問研究・文化活動等を妨害し、日本を国際社会から孤立させかねないものです。

⒊特定秘密保護法は、政府および行政機関が国民に知られると不都合な情報を特定秘密に指定し、隠蔽することができます。軍事や外交などの重要な情報は、当然特定秘密として開示されません。閣議決定による集団的自衛権の行使容認という憲法違反や「武器輸出三原則」の撤廃(「防衛装備移転三原則」の策定)などの事態を考えるならば、同法は「戦争できる国」・「する国」への危険性を限りなくはらんでいます。

⒋特定秘密保護法は、監視社会・管理国家をもたらし、国民やメディアを政府の統制下に置こうとするものです。それは、特定秘密を洩らした公務員、知ろうとしたり伝えたりした民間人が厳罰に処せられることにも端的に示されています。また、特定秘密を扱うのにふさわしいかどうかを調べる「適性評価」は、プライバシーの侵害、国民の思想・信条の自由の侵害以外の何ものでもありません。


 民主主義と平和を希求し、学問の自由を願う私たちは、特定秘密保護法が「秘密を不特定に保護する法律」であり、国権の最高機関である国会の機能を制限するものであることを危惧しています。それは、国会の国政調査権や公開原則を軽視し、国民主権を踏みにじる悪法です。私たちは、特定秘密保護法の施行に反対し、その廃止を強く訴えるとともに、良識ある国会が速やかに廃止のための手続きを開始することを要望します。



2014年11月8日

青山学院大学元教員有志の会